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2010年8月から2011年12月までの1年半、加茂湖水系再生研究所(カモケン)では、
のべ9回の生き物調査を行ってきました。
調査は、2-3ヶ月ごとに定期的に実施しています。
最初に、4mmマスの地引網を引いて、魚類などの湖底付近の生き物を採取します。
次にスコップで湖底の泥を掘り、3mmマスのふるいにかけて泥の中の生き物を調べます。
原則として、採取時に生きているものだけを数えます。
11年7月より、水産寺子屋の協力で、生き物の同定の精度も向上しています。
こごめの入り生き物調査は、子供たちを含め、たくさんの方々のご尽力によって、
ここまで続けることが出来ました。
この場を借りて、皆様に深謝いたします。

これまでの個別の調査結果をふまえ、今回は全体を見通してみたいと思います。
まずは、地引網の調査結果から見ていきましょう。
泥の降り積もる静かで浅いこごめの入りでは、
湖底の表面近くで生活するハゼの仲間が多く見られます。
代表的なものはマハゼ、ウロハゼ、スジハゼです。特にスジハゼが多く見られます。
採取量の変化からは、夏場ほど活動が活発になるらしいことが推察されます。
11年7月以降、採取量が減少しました。

地引網に入るその他の生き物では、ヨシエビやモエビなどの、
3cm程の小型のエビと、泥の上に暮らすウミニナの仲間に注目しました。
グラフ2を参照してください。
小型のエビは、どの回でもある程度の量が得られています。
これらは、こごめの入りに集まる、より大型の肉食動物、
たとえばハゼなどの、主要なエサになっているのではないでしょうか。
こごめの入りの食物連鎖を下支えしているのは、
この小さな透明のエビではないかと考えられます。

加茂湖のような環境では二枚貝が豊富なのですが、
泥の上に溜まった有機物を食べる巻貝も見られます。
ウミニナとホソウミニナは、特に多く入っています。
一見したところ、季節変動などはあまり見られませんが、
11年7月以降、やや減少傾向になっているようです。
この貝は泥の表面に生息しているため、海藻や落ち葉、どろどろした泥の塊など、
入り江の中に、地引網に入りやすい沈下物が豊富にあるときに、
多く入るような印象を受けました。

比較のために、泥から採取したウミニナの数の変動を見てみると、
11年8月に減少していますが、その後徐々に増加しています。
一時的な減少かもしれません。引き続き調査を行って、経過を見たいと思います。

ここまで、多くの生き物では個体数の減少が見られました。
逆に、採取量が増加している生き物もあります。泥の中の二枚貝です。
アサリ、ユウシオガイ、ホトトギスの採取量は、11年5月から増加してきています。
アサリは、小さなものから食用サイズまで、ひとまとめに数えていますが、
回ごとには、ある程度粒はそろっています。
10月にはほとんどが子供の小指のツメほどだったのが、
12月には大人のツメくらいの大きさになっている、というような生長を確認できました。
稚貝が、湖底の枯葉などに、足糸でしっかりと付着している様子も観察できました。

ユウシオガイは加茂湖のサクラガイです。
アサリの稚貝やホトトギスは、沈下物に付着しているため、
調査の前半ではゴミとみなされて見落としていた可能性もあります。
色味の鮮やかなユウシオガイでは、そのような可能性は低いと考えられますが、
アサリ同様、11年に入って増加傾向が認められます。
ホトトギスは泥や砂の海底にすむイガイの仲間です。
加茂湖に特徴的な生き物のひとつではないでしょうか。
やはり、ゆるやかに増加しています。

こごめの入りでは、11年2月にヨシ場を整備し、
海底の一部にカキ殻粉をすき込んでいます。
この結果、カキ殻をすき込んだ区画では、
これまで不足していた酸素が供給されて生物の活動が活発になり、
二枚貝類の増加につながったと考えられます。
他方で、カキ殻によって固くしまった湖底には、
ハゼ類が住処の穴を掘ることが難しくなり、減少傾向が現れたのではないかと考えています。

IMG_3398_convert_20120211225939.jpg

11年12月にこごめの入りを泳いで見たところ、
従来の柔らかい泥の湖底にはハゼ穴が見られましたが、
カキ殻の湖底ではほとんど確認できませんでした。

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もっとも、多くのアサリ殻や小石で固くしまっている樹崎神社付近の湖底では、
ハゼ穴が多数開いていましたので、
今後の回復の見込みや、他の要因の検討も必要と思われます。

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さて、最後になりましたが、水産寺子屋の佐藤先生が、
素晴らしい微小貝を教えて下さいましたので、そのご紹介を。
わずか数mmの小さな貝は、普段まず目に留まることはありませんが、
環境条件がそろわなければ生息できない貴重な生き物です。

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上は、ヨシの根元など、
汽水域の波打ち際ぎりぎりに暮らすサツマクリイロカワザンショウです。
新潟県では、加茂湖の秋津周辺でしか報告の上がっていない珍しい貝だそうです。
こごめの入りに以前からある、小さなヨシ場の株元の濡れた泥の上を、
けっこうな数が這い回っていました。

IMG_3292_convert_20111210141357.jpg

新たに整備した、入り江奥の小川の河口にも、
早くも微小貝の生息が確認されています。左側がカワグチツボです。
とても小さいですけれど、これで大人の個体なのだとか。
用水路の河口の泥の底に、砂粒のように散らばっていました。

生き物調査で採取した泥の中から現れたのは、右側のヨコイトカケギリです。
肉眼では見えにくいですが、表面に美しい螺旋が刻まれています。
これは貝殻だけ確認できました。

小さな島の、小さな湖の、小さな入り江の、小さな貝。
このような生き物を目にするとき、目に見えないほど小さなところにも、
世界の無限の広がりが隠されていることに驚かされます。
加茂湖の恵みの豊かさを改めて教えられ、
こごめの入りが、いっそういとしく感じられます。
そして、黒い泥の中から、この小さな貝殻を見出し、
ひとつひとつに名前を与えた人間の情熱について、
深遠な感慨をいだかずにはいられません。

こごめの入り生き物調査は、今後も継続して行います。次回は5月の予定です。
どなたでも参加できます。参加を希望される方は、
カモケン事務局までお問い合わせください。
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