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2012.03.15 雪虫の誇り
上越で大規模な地すべりが動き続けています。
震災のときもそうでしたが、
個々の家のみならず、ふるさとを失う苦痛には、
本当に、慰めの言葉もありません。

雪国に暮らすものにとって、雪に由来する種々の厄災は、
避けて通れない、終わりのない、うち勝つことの出来ない勝負です。
常勝の将である自然の前に、ただひれ伏すしかない忍従の日々は、
堅実で粘り強い、いわゆる越後人気質の礎となっています。
太平洋岸の方々から見れば、佐渡ですら雪国に含まれるのでしょうけれど、
わたしには、佐渡人と越後人は全く別の人種に見えます。

佐渡人は陽気で、楽観主義者である反面、少々閉鎖的で、見栄張りです。
冬季を除くと、佐渡島の日照時間は東京よりも長いと言われており、
そのことが差異の根底にあるのではないのでしょうか。
桃源郷の夏と、絶海の孤島の冬が同居しているのが佐渡人気質なのです。

雪がただ恐ろしい、忌まわしいだけのものでなく、
雪国に生きる者の誇りでもあると気付いたのは、
長岡に住んでいたときです。越後人が雪について語るとき、
しばしば口にのぼるのが『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』です。
多くの佐渡人には耳馴染みのない、江戸時代後期のこの随筆集は、
越後人にとっては郷里の自慢です。
豪雪地として名高い塩沢(現・南魚沼市)の縮仲買商、
鈴木 牧之(すずき・ぼくし)が江戸で出版するや、
一世を風靡する大ベストセラーになったと伝えられています。

雪国の風俗から雪の結晶の姿に至るまで、
多岐にわたって収録されているこの随筆の中で、
とりわけ、雪国の人びとの心をとらえるのは、わたしの印象では、
『雪蛆(せつじょ)』として記されている、残雪の上の小さな虫です。

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こんにちでは、北越雪譜に記載されているこの虫は、
セッケイカワゲラだと考えられているようです。
早春、川べりの雪上に現れるセッケイカワゲラは、『雪虫』とも呼ばれ、
優美な呼称は、俳諧では春の季語として扱われています。

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山の家の水源付近で、わたしが見かけたセッケイカワゲラは、
体長1cmくらいの、翅の短い黒い小さな昆虫でした。

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飯出山麓の支流のそばでたくさん見かけたものは、
よく似ていましたけれど、翅が長いタイプです。
雪虫は雪上で活動する小型の昆虫の総称で、数十種類もあるとか。
多くは、残雪中に発生するプランクトンなどを摂餌していると言われています。
にわかには信じがたい生き物ですけど、残雪に目を凝らすと、
本当に多くの雪虫たちが、自在に飛び跳ねているのには驚かされます。

雪が厳しく恐ろしいものであればこそ、その脅威を乗り越えて、
春を迎えるときには、雪ん子であることが、晴れがましくも思われる。
人びとが雪虫をいとおしく思うのは、
それが待ちわびた春を告げる虫であるからばかりでなく、
そのたくましさに、自分たちの生き様を見る思いがするからかもしれません。

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