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2012年 3月26日 11:00 宿根木 9.4℃

宿根木から琴浦に至る波蝕台の海岸線は、
素晴らしい散策コースになっています。
海にせり出した平らな岩盤上に、いくつもタイドプールが点在していて、
何度歩いても見飽きないのです。

例年ですと、この時期には、いたるところで、
冬の間に発達した波打ち際の海藻が枯死して、白いラインが現れるのですけれど、
今年は水温が低く、天候も安定しないせいか、
まだ鮮やかなサンゴ藻の色が残っています。

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こんなふうに、冬の荒波に洗われていた岩肌が、
凪が続くと海上に表出してしまいます。

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すると、波打ち際付近に生えていた海藻は、
空気と日光にさらされて、白く枯れ上がってしまいます。
このような現象は白化枯死(はっかこし)と呼ばれます。
サンゴ藻の上部に、うっすら白い線が入っていますね。
例年なら、この白線はもっと幅広く現れていることが多いのです。

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このあたりのタイドプールでは、特に気になる海の鍵穴も、
水没して鮮やかな色彩を見せています。

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汀線ぎりぎりのところにカメノテの群体がありました。
このカメノテ、外側は硬いのですが、内部の肉は柔らかく、
ほろ苦い味わいを好むひとは案外多いのです。
波しぶきからプランクトンだけをこしとって、
何年もかけて育ってきたことを思うと、
わたしはあまり、積極的に食べる気分になれません。

病床で、ほとんど何も食べられなくなってから、
どうしても食べると母が言い張って、どこからか、父がむしり取ってきたカメノテ。
元祖フリーターの父に、ずいぶん苦労させられたようですけれど、
最期は本当によく、母の面倒を見ていました。
あのカメノテは、今も思い出の汀線に生きていて、
プランクトンのような悲喜こもごものかけらを、
硬い殻の隙間から、小さなブラシで、無心にかき集めながら成長し続けています。

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大時化のときにだけ波が届く、台地の一番奥に、
たくさんの小さな貝殻が打ち寄せられています。
この渚にたまる貝殻には、他の海岸とは違う特徴がよく表れています。

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最も目立つのは、赤のグラデーションが美しいチグサガイ。
1cmに満たない小さな巻貝です。何種類か混じっていると思います。
大型の褐藻の上を這い回っているような貝で、
豊かな藻場の存在を暗示しています。

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同じような形状でも、もっと大きくて黄土色をしているのは、
エビスガイ。形がキレイです。

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実際に見たことがないのですけれど、ハネガイの生体は、
イソギンチャクの触手のような蝕糸を備え、その名の通り跳ねるのだとか。
ぜひ検索してご覧になってください。

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真っ白い表面に、裾広がりに分岐する刻み目模様が素敵なヒメツキガイも、
よく打ち上がっています。この貝は、繊細な姿とは裏腹に、
岩礁の隙間の小砂利浜なんかお気に入りで、
干潮時に長時間干出するような場所でも、けっこう平気みたい。

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ナデシコガイも数種類に分類できると思います。色もさることながら、
小さくて形が整っているところが魅力です。

さてここからは、他の海岸ではあまり見かけない、
特徴的なものを取り上げてみましょう。

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のっぺりしたアワビの赤ちゃんみたいなヒメアワビ。
右下のものは、同じくらいの大きさのアワビの稚貝です。
呼吸孔がないのが一番の相違点です。
よく似ていますが、アワビと名がついてはいても、全く別の仲間で、
シタダミなんかと一緒のグループに入っています。

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同じ仲間のアシヤガマ。平べったくつぶれた形の巻貝です。

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テツイロナツモモは、南部鉄器みたいな色や模様、螺頂の彩色、
臍孔(さいこう)と呼ばれる軸孔の細工に至るまで、
完成度の高い造形だと思いませんか。

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そのほか色々、南国の雰囲気の巻貝たち。
こういう貝は、はっきりした特徴があるように見えて、
存外に同定が難しいのです。右下のウラウズガイは、
外洋に面した、波当たりの強い岩礁には比較的多い巻貝です。

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貝殻に混じって、小さなバフンウニがたくさん打ち上がっていました。
石の下で忍耐強く暮らしているイメージのウニも、
子供時代にはこういう試練を受けるのですね。

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帰りがけ、舟揚げのそばで、何か苔のような細かい海藻の体上に、
ばらばらとご飯粒のようにくっついているサンゴ藻の仲間を見つけました。
この仲間は、波打ち際にたくさん生えていて、もちろんサンゴではなく、
かといって海藻マニアからも、
ちょっと格下に見られているような印象があるのですけど、被害妄想かしら。
そんな扱いは気にも留めず、
したたかに生きているところがいじらしいのです。

さて、井坪から宿根木までを訪ねた、春の日の小旅行も、これでおしまい。
ひとり旅の一番の道連れは、好奇心じゃないかしら
ずいぶん遠くへ来た心地がしたけど、ほんの数時間の短い旅でした。

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