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2011.01.21 海の鍵穴
たとえば釣りのために、年に何度も同じ海を訪れる人なら、
ご存知かもしれませんが、季節によって海水面は上下します。
潮汐とは別の変化です。同じ満潮時の水位を比較すると
夏に高くなり、冬には低くなります。
その差は日本海側では、40cm弱です。大潮の干満の差よりも大きいのです。

海水面や、水温、気候の変動に伴って、海藻の帯状分布もまた変化します。
四季折々、山や野が変容していくように、波打ち際もまた多彩な表情を見せます。
その一端はこんなふうに現れます。

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わたしが海の鍵穴と呼んでいるこのくぼみは、
小木半島の波蝕台によく見られる小さなタイドプールです。
これは3月です。
手前からわずかずつ新鮮な海水が供給されるので、鍵の部分だけサンゴ藻の鮮やかな桃色です。
まわりが真っ白になっているのは、冬の間ここが飛沫帯だった証です。
飛沫帯に生えていた海藻は、3月に入って天候が回復し始めると、
日光にさらされていっせいに白く枯れ上がってしまいます。
この現象は白化枯死と呼ばれています。
ふつう白化枯死が見られる範囲は、波打ち際のわずかなラインでしかありませんが、
この場所は平らなので、そのラインが広く引き伸ばされてしまっているのです。

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5月に入ると、初夏の日差しが浅瀬に容赦なく照り付けます。
海水の交換があるとはいえ、小さな潮溜まりにはすぐに温まってしまいます。
心なしかサンゴ藻も、しんどそうに見えます。
もしわずかでも海水が交換していなかったなら、すべて枯れ上がっていたでしょう。
そういう運命をたどるタイドプールも少なくないのです。
一面白化していた鍵穴の周囲には、緑藻などがちらほら生えています。
海水面が上がり始め、うっすら海水を被るようになったのです。

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6月には周囲も完全に水没してしまいます。
鍵穴の部分にはサンゴ藻が生き延びているので、緑藻は侵入していません。
右側、緑藻のまばらな一帯には、サンゴ藻が復活しているのがわかります。
あんなに真っ白に枯れ上がっていたのに、案外しぶとく生き延びていたのです。

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9月には水位は最大になります。
こうなると海岸の様相は一変し、同じ場所を探すのもひと苦労です。
サンゴ藻はますます退色し、かわりにこの時期よく繁茂するウミウチワの白が目立ちます。

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再び冬が来て、年末までに水位はかなり下がります。
あの桃色の鍵穴が現れました。周囲の飛沫帯はまだ岩がむき出しになっています。

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2月、飛沫帯を黒っぽい海藻が覆っています。紅藻ですが、岩のりではなく、
もっとしっかりと岩を抱き込んで、這うように生えています。
カイノリだと思います。この場所は北西風の風裏にあたるので、
岩のりが生えるには適していないのです。
このような姿が見られるのもあとわずかでしょう。3月には枯死する運命です。
真っ白い台地の上に、鮮やかな薄紅色の鍵穴が浮かび上がるとき、
春はもうすぐそこまで来ています。

さて、翌年の5月、再びこの場所を訪れてびっくりしました。
前年は緑藻とサンゴ藻のコントラストが素晴らしかったのですが、
今回は緑藻ではなく褐藻のフクロノリが大繁殖していました。
フクロノリもまた、浅い海や波打ち際を好んで生えます。

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よく、自然は循環しているといいますが、こうしてみると、
ちょっとした条件の違いで、少しずつ変容していて、
同じ円の上を単調に巡っているわけではないことがわかります。
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