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生まれいずる悩み ④

2012年 7月 6日 14:30 多田海水浴場 22.3℃

青葉目に染みる峠越え道を走っていると、谷あいのほうから、
甘ったるい、夏の雨の匂いが薫るときがあるのです。
一体何の花かしら。慌ててあたりを見回してみても、それらしい梢は見えなくて、
どこまでもどこまでも折り重なるような新緑。
マタタビじゃないかと見当をつけてますけど、
花にも雨の気配が潜んでいるのは不思議。

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黄色くなっていた卵嚢は、とうとう茶色くなってしまいました。
まだ、塊はあるようですけど、中が濁っていて、はっきりとは見えません。
細かい卵がいくつも詰まっていた、透明な卵嚢の内部では、
内容物が、白→黄色→褐色と徐々に変化してゆくようです。
また、ひとつの卵嚢の中でも、卵の成長具合は一様でなく、
外側のものが先に白くなっているのがわかります。
この先、どんなふうに生まれてくるのかしら。

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産卵が続いていた岩のほうにも、バイはほとんど残っていません。
卵嚢に覆われているのは、やはり波当たりから陰になる面だけです。

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この岩を見つめ始めたときから、気付いていたんですけど、
ずうっと住んでいるらしい暗黒星雲のヒラムシ
一般にヒラムシは、見た目に似合わず、獰猛な肉食性なんですけど、
バイの卵には興味はないみたい。


2012年 7月 7日 10:00 多田海水浴場 22.4℃

ついに、すべての岩肌からバイの姿がなくなりました。
これが本来の砂浜の姿なのに、急に静けさが戻って、少し寂しい心地もします。

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茶色くなっていた卵嚢は、今日は透き通っていました。
どうやら中身が出てしまったようです。

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雨の日も風の日も通い続けました。
生き物に溢れたこの場所では、いつも何かしらの出会いがありましたけど、
今日はミズクラゲすらほとんど見当たりません。
アマモ場のへりに身をひそめていた、大きなエイが、あわてて逃げていっただけでした。

一旦は回復した透明度も、また、下がってきています。
川水を養分に、プランクトンが殖えているのでしょう。
海の透明度というのは、非常に短期的に変化するらしいことがうかがえます。

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波に揺られるまま、砂底に沈んで息絶えているアメフラシを、
このところよく見かけます。
ついひと月前まで、日がな一日海藻を食み、
それこそ牛のように、丸々と肥え太っていたのに、
産卵という大事業を終えて、命を終えるものも少なくないようです。

バイの寿命は数年と言われます。産卵後も生き続けると思われますが、
ひと夏の大産卵が、命がけの大冒険であったことに、変わりはないでしょう。

なんのための命だったか、何のための熱狂だったかは、
非常にはっきりしています。
この2週間あまりのうちに、わたしが圧倒されたのは、
繁殖という、ただひとつの目的に向かって、
まっしぐらに行進を続ける命たちのひたむきな熱情でした。

その嵐の日々が去ったあとに、ぽっかりと空いた心の穴の底で、
波に揺られて千切れていく。アメフラシの柔らかな死肉。
太陽がくれた季節、命の華やぎのかたわらには、
優しい慰めのように、死の静寂が寄り添っています。

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