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生まれいずる悩み ⑤

2012年 7月 9日 15:30 多田海水浴場 24.1℃

真新しい卵嚢に覆われていた最初の岩肌に、
徐々に砂が降り積もって、少しずつくすんできています。

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卵は、色付いたものもぱらぱら見えますけど、
透き通った空っぽの袋が多くなっていると思います。

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残念ながら肉眼では、これ以上は観察しようがありません。
中が残っていると思われるものを選んで採取すると、
0.5mmにも満たない、砂粒のような丸いものがこぼれ落ちてきました。
顕微鏡で100倍に拡大してみます。

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ちゃあんと巻貝の形になっていました。大人のバイの形と比べると、
少しつぶれていて、口が大きく開いています。

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殻はとても薄く、中身が透けて見えます。
右側の渦巻きの中心あたりが、いわゆる貝の肝の部分でしょう。

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薄茶色の肝が、いくつもひしめきあって、
卵嚢の中の、茶色い斑点のように見えたのかもしれません。

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もしも言葉が通じるなら、彼らに伝えたいことがあります。
あなたのお母さんを知っています。
あなたを生むために、ひとり、海の砂漠を渡って来た。
その姿がどんなに力強く、美しかったか、
どんなにあなたを愛していたか、わたしは知っています。

新潟県水産海洋研究所の報告(2006)によれば、
卵嚢から飛び出した赤ちゃん貝は、すぐには砂に潜らずに、
3日ほどのプランクトン生活を送ります。
この3日間は、生涯で最もハイリスク・ハイリターンな賭けと言えるでしょう。
その後は生息域を、ほとんど移動しないと考えられるバイが、
波に乗って分布を広げる千載一遇の好機であり、
同時に、魚などに捕食されて、早くも大多数は命を落とすことになると思われます。

短期間のプランクトン生活を経て、着底したものは、
大部分の時間を、砂に潜って身を隠しながら、死肉を求めて海底を這い回ります。
無事、産卵できる大きさになるまで、
生きながらえるものは、ごくわずかでしょう。

ここまでずっと、バイたちの産卵にまつわる、
大きな海の、小さな始まりの物語を見つめてきました。
読み続けてくださった方々に、深謝いたします。
ここから先は、もうわたしには追いかけることの出来ない、
彼ら自身の物語の始まります。

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